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【心に残る小説シリーズ】

2025年5月24日 21:25

『博士の愛した数式』──記憶は80分しか続かなくても、やさしさと数式は永遠に残る。

 

 

どうも、BAROQUE男子スタッフです。

 

にぎやかな日常の合間に、ふと読み返したくなる静かな物語があります。

それが――小川洋子さんの小説、『博士の愛した数式』。

 

 

■ 記憶が80分しか持たない博士と、家政婦とその息子

 

事故の後遺症で、新しい記憶が80分しか保てなくなった数学者。

そんな博士の元に派遣された家政婦と、彼女の息子・ルート。

言葉少なに、数式を通してつながっていく3人の静かな日々。

 

最初は不器用な距離感だった彼らが、

ひとつひとつの数字と想いを重ねていくうちに、

**「家族のようなぬくもり」**が生まれていく過程が、本当に美しい。

 

 

■ 数式が人の心をつなぐということ

 

博士にとって、言葉よりも、記憶よりも確かなものは「数式」だった。

 

「素数には、どんな数にも割り切れない孤独な美しさがある。」

 

このセリフは、彼自身の生き方そのもの。

誰ともつながれず、過去も未来も見えないなかで、

それでも毎日人を信じ、愛し、数学で世界を語る。

 

数式が冷たいものだなんて、とても言えない。

この物語では、数式こそが最も温かくて、まっすぐな心の言葉だった。

 

 

■ 忘れてしまっても、消えないものがある

 

博士は記憶を失っても、

ルートに向けるやさしいまなざしだけは変わらない。

家政婦との関係も、毎朝まっさらな気持ちで大切にする。

 

“記憶がない=愛せない”ではない。

 

この作品は、そう教えてくれる。

忘れてしまうからこそ、今日を大事にする――

そんな生き方が、ページの中で静かに息づいている。

 

 

■ 誰にも割り切れない“素数”のような人生も、きっと美しい

 

孤独な博士。

控えめな家政婦。

どこか寂しさを抱えた少年。

どれも“割り切れない”存在だった。

 

でも、その3人が共に過ごす日々が積み重なったとき、

“誰にも割れない数”だった素数が、

世界で一番あたたかな形に変わったような気がした。

 

 

『博士の愛した数式』は、「人と人のつながり」が、

記憶や理屈を超えて生まれることを、そっと教えてくれる物語。

 

 

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